本物の山好き

2017年06月21日

 
この間北穂高東稜を登ったとき、本谷橋をすぎたあたりで追い抜かれた60代半ばのお父さんと涸沢で会話しました。

「明日はどこに登るんですか?」

「昨日まで劔岳行ってたので体力無くなっているから、明日は北穂高をノーマルルートで登るよ。」

初めに断ると劔岳は室堂からでも往復二泊はかかり、距離にすると30km近くあり、北穂高のノーマルルートも上高地からは往復30kmあります。

それを、疲れてるから北穂高のノーマルルート、と言うのは、とってもすごいこと。年に一度鹿児島からの遠征で二週間をソロでフルにアルプスに費やすそうです。

北穂高の東稜を登っている朝5時頃、北穂沢を詰めて登るお父さんがこっちに向かって大手を振ってくれたとき、嬉しかったです。

去年、岳沢で出会った70代半ばのおじいさん。

「明日は天狗沢からジャンタルムへ行く」と言いました。

天狗沢からのジャンダルムは、一般ルートではありますが滑落すれば死ぬルート。そこを1人で70何才のご老人が、北海道から毎年続けてかれこれ50年アルプスに通っていると聞きました。

三年前、木曾駒ヶ岳の宝剣南稜から下山していたとき、こちらも70代のご老人がソロで登って来ました。年季の入ったピッケルとアイゼンは「40年前にヒマラヤへ登った時のものを今でも使っている」と聞きました。丁寧にメンテナンスされたピッケルはピカピカに輝いていて「雪山を感じたいが、もう体力が無いからコルまで上がってピストンで降りる」と話しを頂きました。



二年前、息子を連れて行った駒ヶ岳。菅の台バスセンターでバスを待っていると、一組の老夫婦が息子を見て話しかけて来てくれました。「小さいのに頑張るんねぇ、すごいねえ。」と。「観光ですか」と伺うと、「向かいの南アルプス仙丈ヶ岳のふもとの大平山荘をやっている、いつも向こうから見える中央アルプスを久しぶりに感じたくて来たのよ」と、話しをされました。

山に住んでいても山に行く
40年前から綺麗にピッケルを磨いて今も使う。昨日劔岳で疲れたから今日は北穂高。毎年北海道からアルプスへ。

山が本当に好きな人と話しをすると、まだまだ自分は赤ちゃんレベルだと感じます。

漫画『岳』の三歩が言いました。

高い山も、低い山も、全部満点!

一言で山好きと言いましても、山には色々な『好き』があります。

ひとりで登山道をテクテク登るのが好き

テントをかついでひっそりとテント場で夜を過ごすのが好き

山のてっぺんに立つのが好き

山にカメラを持って行ってきれいな写真を撮るのが好き

山でご飯を食べるのが好き

トレイルランニングで自分を鍛えるのが好き

私の場合の好きは、行った事の無い、登山道では無い、間違えば死ぬかもしれない所で死にたくないと感じる感情を確かめながら、確実なルートを自分の目で見つけ、ピークにたどり着いた時に感じる達成感と生きてて良かったと心から思える瞬間を感じるところが、好きです。

でも、山好きはきっと、どんな山でも好きな山なんだと思います。

本物の山好きにいつかなりたいと思います。